「君の写真を我が家に飾らせてもらってるんだ」そう言われることが写 真家としてはなによりも嬉しい。


　連れ合いが「素敵な写真だねぇ」って言って君の写真をえらんだ僕を褒めるのよ、と照れ笑い。「なんなんだろうねぇ」そう言って、僕に握手を求めてこられた。


　 俳優さんからそんなこと面と向かって言われると、嬉しいじゃないですか。僕は映画の出演者にでもなった気分で聴いている。わざわざ会いに来てくださり、面 と向かうって、人をこころから祝福する言の葉を発してくださる。


「同じ場所にいても、そのことに気がつかない人もいる。それに写真を撮られている人も、キャメラマンがどんな人かによって表情もかわるだろぅ。いいんだよ、撮られている瞬間気づいていい顔してたり」


　 僕は地井武男さんからそう言われた時、はからずも涙眼になってしまった。それは阪神大震災でぐちゃぐちゃになった神戸の町での1995年に起きた出来事だった。


　 ありがとうございます。僕はこうして時代や震災に翻弄されながらも、写真を撮り続けております。すいません、あれから写 真をおみせできてないことが、一生の不覚となってしまいました。 地井武男さん、2012年6月29日逝去。散歩を楽しんでください。小椋佳「記憶」を聴きながら＠KOBE2012.6