はれ晴れと
たとえば桜の咲く空のように

三重県美杉村の三多気の大きな桜の木

 三多気(みたけ)のある美杉村は中世には伊勢の国司北畠氏の本拠地であった。美杉のその名の通 り杉や桧の集荷地としてにぎわったところだ。三多気の桜として有名な桜並木があるのが、北畠氏の祈願所として栄えた真言宗の古刹真福院。1.5キロの参道がその桜並木だ。山を越えれば奈良県の大洞山の中腹にひっそり建つ真福院には約2.000本のヤマザクラが咲く。白鳳時代(670年頃)に役行者が奈良の吉野山と同様に蔵王権現を祀ったのが真福院のはじまりと言われている。

 桜のはじまりは900年ごろからの植樹からといわれ、その後北畠氏代々の保護を受けてこれほどまでになったと言われている。桜並木の横にも大きなヤマザクラの林も有ったり(写 真下)と、山のあちこちが白く輝く。お花見をするというより山里なので、ハイキングをして桜の下でお弁当を食べるというのが良い。千年、そう一世紀もの間ここの桜もこの地の人びとに大切にされながら、今に姿を残しているのだ。そう考えると、木肌が苔に覆われている山桜の姿が何とも言えぬ 感動を与えてくれる。何十年にも何百年にも渡って何かを大切に守る、そんな気持ちが現代人の中にどれほどあるだろうか。それはバブルで泡とともに浮かれて馬鹿顔になった私たちのすこし先輩諸氏の顔を見ればわかるというもの。

 いま各地にあるソメイヨシノの名所もこのような山桜と比べれば短い。ソメイヨシノの寿命を考えると、そのうち数十年もすれば無くなる可能性もある。ソメイヨシノの寿命は長くて100年、車の排ガスには木が弱いので、そんな地域では50年とも言われてる。なんだか人間と同じような木だ。桜の木が無くなってからでは遅いので、今のうちから次の世代を育てていないといけない。私が高齢者になるころには、ソメイヨシノも高齢化問題で各地の桜の名所と言われるところで「どうしよう」ということになっているのかもしれない。現実問題としてソメイヨシノの名所はがらっと替わっているかもしれない。桜の名所づくりに今取り組んでいる地域が新しい名所になるのだろう。そう思うと今まであまり好んでソメイヨシノの撮影はしてこなかったけれど、21世紀からはじめようかと思っている。なくならないうちに。

*このページの製作年は1996年、データ内容は当時のものです*
撮影1993年4月21日
場所
三重県一志郡美杉村三多気
交通
JR名松線伊勢奥津駅から名張行きバス約10分杉平下車とほ約10分
問い合わせ
美杉村役場059-272-1111

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