寒い海に生息するというクリオネ(Clione limacina)は、冬になると流氷の着岸とともに北海道のニュースになる存在です。


  1980年代バブルの頃に、テレビコマーシャルでインパクトある存在にと、使われて一般 的になりました。その点ではウーパールーパーやエリマキトカゲと同種類です。ほんとはクリオネ属、ハダカカメガイ属。


  広告で人が知らない生物や、誰でも守ってあげたいとおもってしまう生物の赤ちゃんをビジュアルに使った宣伝は、いかがなものかとおもいますが。ただ、このとき使われたコピーが「流氷の天使」ということで、誰もが知る存在に小さないち生物がなったのですから、言の葉の力はすごいですね。


「流氷の天使」ですが、英語では sea angel と呼ばれているので、たぶんそこからきてると想像できます。和名の「ハダカカメガイ・裸亀貝」は、そのものずばりで素晴らしいネーミング。成長すると完全に貝殻を失い裸同然ですから。はだかになる亀貝の一種、シュールです、いやシェールです。


  胴体に付く透明な1対の翼足が、天使の羽根そっくり。ルックスは抜群、ですがこの羽根の個体差は大きいです。不透明な内蔵のあるカラダが大きな個体が羽根が大きいかというとそうでもなく、小さいクリオネで天使の羽根が大きいものが、人から見ると美しい風景です。ひとりひとり天使の羽根は違うという、これが自然。


  ですからあなたも「流氷の天使」と言えば、この生物と察しがつくのでは。ほんとうに観た目は水にただよい優雅、くらげのようで今風表現では「癒される存在」ですが、生態はそうではありません。


  私が友人と10匹水槽のなかに入れて観察していたら、知らない間に数が減っている。メダカと一緒で共食いしているのです。かわいくてキレイなものには、毒が有る?女の人と同じですねぇ、怖いですねぇ(笑)


  日本には流氷とともに北極圏から流れ着いてきます。わたしがオホーツクの海、紋別 で友人と採取したものは1センチまでの個体でした。流氷が流れ着く地元の話しでは北海道でも1センチ未満から大きいものは3センチくらいのものまで存在すると。寿命は数年。 日本近海での生息域は、北海道沿岸や日本海の新潟や越前沖などでもみられる。


 生息域など 図書館やネットで調べると。1950年に和歌山沖で捕獲、2009年に沼津大瀬崎で60年ぶりに再発見とあり日本海だけでなく太平洋で、しかも西日本でも確認されているらしい。ただこれはヒョウタンハダカカメガイで、ずんぐりむっくりしたクリオネで、「天使のドラえもん」そっくり。 こちらはこちらで愛嬌があって、なぜ人気にならないのか不思議。


  蛇足ですが。流氷をご覧になられた事の無い方は一度、ぜひ自分の目でみてください。驚きと神秘を感じるその色が素敵です。ただし北海道に流氷があまり来ない年もあります。しばれる冬に、どうぞ。
 
 
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2012年8月7日 変更 ©さかまた組


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