桜前線に使われる沖縄の桜は本土とは違う寒緋桜だ。
沖縄の桜の開花は1月と早い。2000年サミットがおこなわれる
名護の桜まつりはしとしと雨だった。
2000年1月30日撮影、名護市。

 

 気象庁が植物や動物の状態が季節によって変化する現象の観測することを「生物季節観測」という。その中でももっともよく知られているのが「桜前線」だ。桜の開花日が同じ場所を線で結んでみると、天気図の前線に似ていることから、そう呼ばれている。私は気象庁が発表しているから○○前線か、と思ってた事もあるのだが。

  一般的にはこの「桜前線」と「紅葉前線」のもっぱら植物の季節による変化を表したもの。そのほかツバメがはじめて観られた日の「ツバメ前線」や世界的にみても種類の豊富なトンボの楽園日本にぴったりの「シオカラトンボ前線」などの動物の状態が季節によって変化する現象の「生物季節観測」もある。私が子供のころ、神戸の町中の私の家のなかの玄関にツバメの巣が春になるとできました。ツバメの巣ができる家は縁起がいいと、私たちは靴を履くとき頭にフンを落とされようが我慢していました。ツバメは計ったかのように同じ頃に渡ってくる。

  鳥が渡りの行動を起こすのは気温の変化でなく、日照時間と言われています。日照時間は年ごとの変化が比較的少ないので、日時がそれほどずれることがありません。ですから渡り鳥のコースになっている地域の方は毎年その鳥の行動を観察されればきっと面 白いと思う。最近私は、仕事場から春になるとメジロにまじって来る渡り鳥を観察している。神戸は街中でも自然が豊でほっとする。

 「桜前線」の観測対象になる桜は、ソメイヨシノが基本。ただしソメイヨシノ桜の咲かない地域、北海道ではオオヤマザクラ・蝦夷山桜や千島桜、八重山諸島・沖縄では寒緋桜がその対象になりる。ですから桜と名はついても全く違うものと考えたほうがよい。よく開花宣言をすると、気の早い関西人はもう満開だ、と花見に繰りだす。しかし、ここで言う「開花」とは観測対象である気象台の敷地内などにあるソメイヨシノの木に花が数輪以上開いた状態のことを言うらしい。また「満開」は8分咲きの状態を言いう。

 桜好きの 私は学生時代、新聞に掲載されている「桜の開花情報」で満開とありながら、私の目からはぜんぜん満開じゃない桜を観るたび「へん」と思っていましたが、からくりは8分で満開と言うことだ。もっとええ加減で腹が立ったのは「スキー場だより」の積雪情報。特に雪がまだこれからと言う若い時期は、本当にええ加減。雪の状態をどこで計測するのかと言う事ですが、これなどは全国統一された基本的な基準はあるのだろうか、とうたがいたくなりました。

  あくまでもこう言ったたぐいのものは目安でしか存在しない。アテにならない。それよりも現地の宿などに電話で直接状況を聞いた方がいくらか有益な情報となるでしょう。また今の時代インターネットによる情報発信、受信は有益だと思う、ケレンデのライブ中継や写 真ですぐにわかるだろうし。それにメールを使えば、双方向の情報やり取りも出来るわけだから。

  また、自分が必要な情報はこまめに毎年集めていると、いざ花見に行く際もなによりの頼りになる。情報はいろいろなところから集めて、たとえそれが人が言うものとは違っていても自分がそうだと思えば、たとえ桜の花が散っていたとしても違う楽しみ方が出来ると思う。私は地震以降の教訓として、そう考えてます。デマもあの時たくさんありました。自分の目と耳で確かめたものが、自分にとっては基準となるものなのだと。

 ソメイヨシノの開花は気象温度でも予測することができる。1日の平均気温が12-13℃になると開花し始めると言われている。しかし雪国と言われる地方では10℃。開花から満開になるのにかかる日数はおよそ7-8日間、東北地方では5日間で寒冷地になるほど開花から満開までの日数が短なるといわれています。これもあくまでも目安でしかありません。木の個体差の方が激しいからです。また、その地区独特の土壌環境などが加わると、一概にこの日に開花しますなんて言えるはずない。そう言う意味では開花宣言やサクラ前線はデータというより春の風物詩としてとらえるほうが良いのかも知れないなどと私は思うのだけれど。

 それになにも満開の時だけが桜でもありませんし、8分咲きのまだ若いときもよし、満開の一瞬もよし、そして花びらが散ってゆく姿もまたよし。そうした移り変わりを愛でる風流なこころが有るから、私たち日本に生まれ育った人は季節観が有るわけではないでしょうか。  

 さいごに私のホームページの桜の情報「桜ノ咲ク美シキ國ガアッタ」もあくまでも目安として、また撮影から長い時間経ているものは、その桜の姿がそのような形では存在しないかも知れないことを頭に置いておいてください。私が確認できた事実はその都度掲載してゆくつもりですが。こんな事を書くのは、情報がよくでできていない事を言い逃れているわけではありません。私が仕事で取材などさせていただいた際、よく雑誌の取材記事を見たり、旅行のパンフレットなどを見て来れれて食事が写 真と違うなどとクレームを言う人が多いと、関係者のかたが言われるからです。食事など誰が考えても旬の食材があるわけだから、そんな写 真と同じ料理がでることが驚きであることが解らないほどなのでしょうか。

  傑作な話は夏、金沢の兼六園を見学した方がこれは私の見たのと違うと言って怒ったそうです。なにが違うか、それは雪の重みで松の枝が折れることを防ぐためにする藁のつりです。「そりゃ、雪が今にも降りそうな晩秋ならいいざしらず、夏にそんなこと言われるのですよ」そう言って旅行会社の方は嘆いていました。文句いいのかたは写 真で見たイメージの姿を観たくてツアーに参加したのでしょう。だけど日本には四季があり、そのことが生活と大きくかかわり、それによって食事から全て変わってゆく。そんな四季の美しい移り変わりを忘れないで欲しいと思います。そしてその地域独自の季節のたよりがあることや食べ物があることも。

  さぁ、その土地の旬のうまいものと美しい桜を味わいに行きましょう。それに温泉があれば最高なんですけどね。2000年記

前のページへ

 

 


本土では一般 的、と言う言葉は私は嫌いだが、どこにでも
あるソメイヨシノの桜。これが桜前線の本土での標準木だ。
しかし西日本では土壌の性質からこのように白くなることも
多く、桜色とは言い難い。
1995年4月10日撮影、神戸市。
 
 

  本土でも日本海側の桜の開花は遅い。開花後、
満開に直ぐになり、海風ですぐに散る。
なんともはかない。そこがいいと日本海側の人は言う。
満開でどんちゃん騒ぎ、と言うかお花見の宴はあまり
しないのも、どこか控えめな感じをいつも受ける。
日本海側の人は「そりゃ、桜が咲いても寒いからだよ」
と笑った。
1993年4月18日撮影、京都天の橋だて。
 
 

 北海道の桜前線の標準木はピンク色の濃いいオオヤマザクラ。
白樺林の中にぽつんとだれが植えたか咲いてたりします。
1997年5月18日北海道。
 
 
 
世界一の桜の名所と私は思う奈良吉野山の桜。
ソメイヨシノのため染井吉野が咲いていると思われがち。
実はほとんどは山桜です。
むかしのお花見と言えばこの桜だったのです。
山桜は花と一緒に葉がでます。茶色く見えるのが葉っぱです。
19991年4月20日撮影奈良吉野。
 
 
 
城址ではお花見がどこの地域もさかんです。
人知れず隠れるような造りになっている所が多く、
カップルにはもってこい。春の陽気にさそわれて、
さぁ、あなたも大切な人と出かけてみませんか。
1999年4月21日撮影長野高遠のタカトウコヒガンザクラ。

 


本ホームページに掲載の文章・画像・写真等には著作権があります。
すべてのコンテンツの無断複写・転載を禁じます。
©MAC FUKUDA All rights reserved. 2012年8月29日